『カメリア』 アジアの才能が生んだ、時にあらがう三つの記憶の物語

アジアの才能が生んだ、時にあらがう三つの記憶の物語
■イントロダクション
1996年に創設され、いまやアジアで最も注目される映画祭に成長したといっても過言ではない韓国の釜山国際映画祭。その映画祭と、会場である釜山広域市では長年、釜山を舞台にした映画をつくりたいという思いがあった。2009年、両者の思いは〈釜山プロジェクト〉として具体的に動き出した。
オムニバス映画『カメリア』の舞台は釜山、テーマは「愛」。その2条件の中で監督たちに自由に撮影してもらう。監督は釜山国際映画祭と縁のある3人の映画監督を選び出した。
 

「LOVE_FOR_SALE」-1.jpg
その3人とは、映画『怪盗ブラック・タイガー』などで日本でも知られるタイのウィシット・サーサナティアン、日本の行定勲、韓国は『地球を守れ!』でモスクワ映画祭ほか各国映画祭で賞に輝く実力派チャン・ジュナン。個性の違った3監督が、それぞれの釜山をスクリーンに映し出す。

サーサナティアン監督の「IRON PUSSY」は、1970年代の釜山にやって来たタイのスパイの悲恋物語。女装してスパイ活動をするアイアン・プッシー(ミシェル・シャオワナサイ)と韓国人のジホン(キム・ミンジュン)との結ばれぬ愛をコミカルに描く。暑い国出身の監督ならではの豊かな色彩に彩られた物語は、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさがある。

圧倒的な完成度で魅了するのは、行定監督の『Kamome』だ。映画をこよなく愛する昔気質の撮影監督が、不思議な少女と出会い、ほのかな恋心を抱くファンタジー。少女を演じた吉高由里子の透明感ある美しさと、撮影監督を演じた名優ソル・ギョングの視線、仕草、涙といった演技の一つひとつが心に沁みる。観光名所としての顔とは異なる夜の釜山の町並みは、どこか懐かしくやさしい気持ちにさせてくれる。日本人監督ならではの情緒が滲んだ作品に仕上がっている。

未来都市・釜山では記憶の売り買いができるー。チャン・ジュナン監督はそんなSFタッチの『LOVE FOR SALE』を撮り上げた。主演は釜山出身のカン・ドンウォンと、ソン・ヘギョ。ドンウォンが軍に入隊して間もなく1年になるだけに、本作はファンにとってはうれしいプレゼントに違いない。ストーリーも最近のドンウォン作品にはない恋愛モノだけに、ファンには見逃せない1本となっている。

個性溢れる監督たちがとらえた釜山を通して、私たちはどんな釜山を発見することができるだろうか。


IRON PUSSY
■STORY kame-ria2.jpg
朴正煕大統領が暗殺された1979年の釜山。タイの必殺仕事人ことアイアン・プッシー(ミシェル・シャオワナサイ)は、ふだんは飲食店で働く冴えない板前のオヤジ。だが、ひとたび呼び出しがかかれば、オシャレでレトロシックな装いの、華麗なる女スパイに変身して任務をこなす。この日、指令を受けたプッシーはスタイリッシュな頭巾つきのコートを纏い、ディスコへ向かう。そこでイケメンの男、ジホン(キム・ミンジュン)と出会い恋に落ちるが、さらなる指令は「大悪党を処刑しろ」。ターゲットは非情にもジホンその人だった……。
■スタッフ
出演:ミシェル・シャオワナサイ、キム・ミンジュン
監督:ウィシット・サーサナティアン

 

Kamome  
■STORY kame-ria1.jpg
映画の撮影で釜山にやって来たパク・ヨンス(ソル・ギョング)は大御所の撮影監督。わがまま女優にうんざりしながら撮影していた彼は、ふと、カメラの向こうに人影を見て中断してしまう。機嫌を損ねた女優によってその日の撮影は中止。ヨンスは後輩を誘って飲み屋に繰り出すが、雑踏で靴を履かずに町を漂う少女(吉高由里子)とすれ違う。再び少女に出会ったヨンスは彼女を店に招き入れ、彼女のために靴を買いに走る。カモメと名乗るその少女が気になって仕方がない彼は結局、一晩中、少女と一緒に釜山の町を歩き回り、夜の海に向うが・・・・・・・。

■スタッフ
出演:ソル・ギョング『力道山』『SUNAMI-ツナミ-』、吉高由里子画『GANTZ』、『婚前特急』、『カイジ2』
監督:行定勲『GO』、『世界の中心で愛をさけぶ』『今度は愛妻家』『パレード』


LOVE FOR SALE  「LOVE_FOR_SALE」2-1.jpg
■STORY
近未来の釜山では、脳から愛の感情と記憶を取り出し保存することが可能となっていた。そのため、愛を脳から取り出し、それを売り買いするビジネスが大盛況。他人の愛で本物の恋愛を体験できるとあって、だれもがこぞって愛を欲しがっていた。ジェイ(カン・ドンウォン)はかつてラブビジネスを牛耳る組織に、愛するボラ(ソン・ヘギョ)との仲を引き裂かれ、殺されかけた。一命を取り留めて生還した彼は、組織の人間に復讐を果たしながらボラを助け出すため「大宮殿」と呼ばれる一大組織へ潜入を果たす。


■スタッフ
出演:カン・ドンウォン『デュエリスト』『私たちの幸せな時間』『義兄弟』
ソン・へギョ『波浪注意報』『黄真伊』『フェティッシュ』
監督:チャン・ジュナン 


  動画はこちらから! 

 


◆「カメリア」「kamome」主演 ソル・ギョング オフィシャルインタビュー

●「カメリア」に出演した経緯について soru-gyanngu1.jpg
今回出演した「kamome」は脚本もとても素晴 らしかったし、なにより行定監督からのオファーだったのですぐにOKしました。断る理由は無かったですね。

●共演した、吉高由里子さんについて、印象はいかがでしたか?
強烈な「匂い」をもった女優さんだね。「香り」じゃなくって「におい(日本語で)」。彼女の撮影期間は5日間だけだったけれども、すぐにスタッフやキャストの心をわし掴みにしたんだ。そして撮影が終わってしまうと彼女が演じたカモメのようにこつ然と姿を消した。私たちは彼女の残した足跡寂しさを強く感じたよ。言葉は通じなくてもハートでコミュニケーションをとれる素晴らしい女性だと思う。

●行定監督と仕事をすることについて。
本当に楽しかった。日本の監督とは初めて仕事をしたけれど、ときめくような時間を過ごすことができたよ。最近の韓国映画は、作品も撮影もとってもスピーディーで、じっくり映画について考える暇もないんだ。でも今回、監督は私に十分な時間をくれた。流れに身を任せるように現場に溶け込んでいくことができたし、撮影が始まってもデジタルではなく、フィルムが回るカタカタという心地よい音とともに、とても長い息遣いの中で芝居をすることができた。それは役者にとっては最高に興奮する瞬間なんだ。

●「kamome」という作品について
日本的な情緒を感じる作品だと思う。韓国映画はストレートで、伝えたいことを直接表現することが多いけれど、幻想的な雰囲気、儚い情緒を持った「kamome」は、舞台は釜山だけれども、日本の良さを感じる作品です。

●俳優として常に心がけている事は?
俳優として普段から特別に心がけているということもないんです。毎日学習しているつもりでも、なかなか上手くいかない自分に苛立ちを感じたり、辛くなったりすることもある普通の人間です。でも、「平凡であろう」と努力はしているかもしれない。あなたの隣に住んでいる人を自然に演じるために。だから皆に交じって、街の屋台でビールを飲んだりしているんですよ(笑)

【作品名】 『カメリア』
【公式HP】 http://www.camellia-movie.net/index.html
【公開表記】10.22(sat) 新宿バルト9他ROADSHOW
【コピーライト】 (c) 2010 BALCON/SIDUS FNH 【上映時間】2時間23分
【配給】東映 
 

 

 


 

 
1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11
[Copy selction] [Translate With Google]