今年1月に劇場公開された総製作費韓国史上No.1というおよそ25億円をかたアクション大作『マイウェイ 12,000キロの真実』のブルーレイ&DVD リリースを記念して、6月5日都内で開催された試写会に、オダギリジョーと山本太郎が登壇しました。
日本人将校長谷川辰雄役を演じたオダギリジョーは、「今回DVDが発売されるということで呼んでいただいたんですけども、本当にもう2年程前の話になるのでほぼ忘れていまして、今日みなさんと一緒に思い出していければと思っています」と笑いを取り、総長野田を演じた山本太郎は「このDVDブルーレイが発売されて一番うれしいのは、監督でもなく、チャン・ドンゴンさんでもなくオダギリさんでもなく僕なんです。まだ一度も本編見てないんで(笑)」とこれもまた笑いを誘いました。
Q戦争という極限状態の中で、人柄も変わっていくと言う役でしたが、役作りで参考にたこと、悩まれたことは?
オダギリ「韓国の俳優さんの中で、日本人の役ではありますが参加させてもらうということに対して、日本の俳優全体そして、日本人もやるなあと、思わせたいじゃないですか。なのでがんばっていきたいなと思っていましたね」
Q役作りの面で苦労された部分、こだわった部分は?
山本「野田はほんとすごい嫌な奴でしたから、その役作りと言うたら大変でした。こんな苦労した作品はないですよ。一番最初に台本をもらってみんなが読んで、それぞれの役柄をどう深めていくのか、ここをこうして欲しいという場が何度ももたれたんですよ。なかなか納得いかないと、日本人チームはそれで結構長い時間何度も何度もその自分たちの役柄を深めるために話し合いが続けられました。僕がやった野田という役は日本兵、悪い日本兵アイコンとして登場するから、すごく抵抗があったんですね。太平洋戦争を語るときに日本兵というのはあまりいいイメージで語られること少ないじゃないですか。そういう中で、そういうイメージがあったとしても、それが全てではないんですね。中には、占領先の市民に対して手をさしのべた人もいるだろうし、それが日本人のすべてではないっていう部分を、少しでもいいから、その人のバックボーンが見えるような、バックグラウンドが見えたようなものが含まれてないと、もうやりたくないと。その話が通らないんやったら、もう俺降りようと思うねんみたいな。ネゴシエーションしていったっていう部分があるんですけども。おそらく、僕の中でちょっと視野が狭い部分もあって、監督はもっと広い部分で見てたと思うというか、いろんな人種が混ざる映画ですよね。その中の日本人としてではなく、人間というキャラクターの中にいろんな人間があって、その中の一人の部分として野田という役を演じて欲しいんだということに気付いたとき、すっと落ちたというか、目からうろこでしたね」
Q海外9か月撮影で何か印象に残っていることは?
オダギリ「長かったですね、ほんとに。ほぼ行きっぱなしでしたし。その時に、3・11の地震があった時でもありましたし、自分の子どもが生まれた時でもありますし、いろんな自分の中でのタイミングがこの作品を撮影している時に起こったので、9か月の長さっていうものは、それだけのことを起こすんだなと言うこと同時に、よくもまぁひとつの映画を9か月も撮影するなあと思いました。日本映画はそんなにかけないからですね。一つの作品にこだわって作っているなみたいな気持ちはいまだにありますけどね。大変でしたよね」
山本「僕や他日本人キャストは途中で帰ることが許されるというか。オダギリくん主演じゃないですか。ストーリーにずっと関わっているわけですから、ずっといるんですよね。僕たちが韓国ロケを終わった後にも、ヨーロッパロケが残っている。韓国ロケが全部オールアップやっていう感動に満ちている時に、オダギリくんが仔犬のような目で見てるんですよね。あの人達は今日で終わっちゃうんだなっていう。言葉にはみせないですけど、目で訴えていました(笑)。ずっといといてあげたかったんですけどすぐ帰りました(笑)」
Q.オダギリさん、寂しさだったんですか?
オダギリ「やっぱり日本の俳優同士でごはん食べたりしてましたんで、さみしさが一番だったんでしょう。太郎くんが現場終わって、日本に帰るたぶん車の中だと思うんですけど、すぐにお疲れ様メールをくれて、みんながみんなやっぱりメールをくれるんですよ。残りの撮影がんばってねみたいな。でも、それが応援ではあるんですけども、僕からするとすごく終わった感があふれている、なんとなくこう、さみしいというか、僕はそれから半年ぐらいは先があったので、ほんとにうらやましさもありましたし、一人ひとりが抜けていくたびにそう複雑な思いを持っていましたね。本当にお疲れさまでしたという気持ちもあるんですけど、もうちょっといてくれないかなみたいな、そういう思いが強くありましたね」
山本「撮影の一番最後のシーンのところで大きい戦闘シーンがあって、僕そこまでの激戦をその間にもあったんですけど、一番激しい戦闘をそこで経験したわけです。でもオダギリくんはその前にも経験していたんです。その撮影現場でなんていうか修行僧のような感じで自分の出番を待ち、現場でですよ、あーでもないこーでもないと。韓国の人たちが朝からニンニクとか食べてるからむっちゃ元気なんですよ。どうのこうの言うて。そこで、いろいろ手順とかが変わって最終的にこうしようと最初に言ってたこととぜんぜん違ってたりするんですよ。その変化の中でオダギリくんが修行僧のように出番がきたときには自分は行きますっていう感じで見てて、僕はそれを見てオダギリくんえらいなぁと。主演で一人でずっとこなすシーンがあまりにも多いじゃないですか。僕はそこまで多くないんで、その辛さっていうのはもちろん辛いんですけど、その一番辛そうな場面でも、その場にたたずんでいるというか、平常心を保ち続けているというのがすごいなぁと思いましたね。修行僧のように(爆)
オダギリ「でも韓国の俳優さんがあまりにもよく出来たかたばっかりで、ほんとに文句ひとつ言わない人たちだったんで、そういうのもありますね。あんまり僕らが言うべきところじゃないのかなって」
山本「たぶん日本の撮影現場だったら韓国での撮影現場っていうのはちょっとないんちゃうのっていうようなことがでてもおかしくない雰囲気なんです。向こうにとってはふつうなんですけど。そういう状況の中で韓国の俳優さんたちは、我慢強いんやろね。どんだけ寒くても文句ひとつ言わない。僕たちはちょっと風しのぐとこ行ったりするんですけどて、韓国の人たちはずっと待ってるんですよね。すごいなと思いますね」
Q.ノルマンディの上陸作戦の時はほんとに大がかりなセットを組まれましたし、大変な作業だったとうかがっていますが?
オダギリ「これノルマンディの写真だと思うんですけど、ほんとによくこんなん作ったなって感じのセットで3か月かけて作ったって書いてありましたね。空撮もありましたし、見て迫力を感じるセットトだったんで、気持ちが自然と盛り上がるというか、また何か始まるんだなと言う気はありましたね。
Q.監督さんが映像のこだわりがあったとお伺いしたんですが。一緒にカメラの方がオダギリさんと戦車から落ちるというような。
オダギリ「戦車から一緒に転がることもあれば、爆発で一緒に吹っ飛ぶというようなことがあったり、メイキングにたぶん入ってるいと思うんですけど、何服っていうんですか、全部シルバーで出来た消防、防火服みたいなので現場カメラを回してたりしてたんで、ほんとに現場で役者も大変だったんですけど、スタッフのみなさんも大変な思いで、監督のために画を作ってたんで、なんかあの監督がニコニコ現場で喜んでる姿を見るとね、なんていうんですかね、みんなががんばって、監督を喜ばしているという、なんとなくむかついたり(爆)冗談ですけど(笑)」
山本「監督が絶対ですもんね。僕らが血まみれになってドロドロになっているところに、クリスマスの時に監督がモニタールームから出てきて、箱を持ってきたんですよね。差し出して食べなさいみたいな。マカロンを見事に僕らにふるまってくださって、また優雅にモニタールームに戻っていったんですよね。僕ら血まみれで(笑)」
オダギリ「温度差がね。マカロンなんか欲しい感じじゃないんですよ。(爆)」
Qメイキング以上の裏話が聞けましたね。
オダギリ「あの人のよさにだまされますよね」
山本「だまされるて(笑)」
オダギリ「なんか許してしまうんですよね。あの監督」
山本「それがあの監督の魅力なんですよね」
Qチャンドンゴンさんは共演されてどんな印象でしたか?
オダギリ「本当に立派な方で、けちのつけようがない(笑)」
山本「けちつける必要もないんですけど(笑)。何一つ悪いところがないという。完璧です」
オダギリ「いやほんとにすばらしい俳優であり、すばらしい人間だと思いますしね」
Q共演されて得られるものも多かった?
オダギリ「映画スター、スターっていうのはこうゆうものなんだなと何度も感じましたね」
Q極寒のシーンで印象深かったシーンはありますか?
オダギリ「マイナス17度ってほんとに寒かったのですが、寒い中吊るされましたね。台本読んでる時から、大変になるなと思ってたんですけど、ほんとに吊るされるのが一番大変でした。結果的に。後のシーンはどうにか・・・(後ろを見て)これですね。ほんとに大変でした」
Q何時間ぐらい吊るされていたんですか?
オダギリ「そんなには長くはなかったのですが、長いとほんとに大変なことになっちゃうんで(笑)ワンカット、ワンカット下ろしてもらって撮影したんですけど、全体重が一か所のハーネスの部分にかかるんで、ほんとうに吐きそうでしたね」
Q寒さ対策なんかはされましたか?
山本「先ほどのオダギリくんのワンショットの写真ありましたけど、あれとは別に劇用の液とかつけてないですからね。すべてリアルの寒さで、たまたまできてしまった霜ですね。いいですか。これで押し切っても?」
オダギリ「完全にメイクですけどね(笑)」
山本「すみません、うそついておりました。すっごいかわいそうなところで一生懸命がんばってんなって。実際ちゃんとそういう機械がね。実際に寒いんですけど、ふぁーっと吹き付けられて、辛くて」
オダギリ「辛いというか、もうむかつくんですよね。(笑)なんかホースみたいなので、ぶぁーっとかけられるんですよ。体中雪を。もうその度にむかついてね(笑)」
山本「それこそ収容所にいるような扱いなんですよね。表むいたら次裏向けみたいな」
オダギリ「ほんとに人間の扱いじゃないじゃないですか。見てもらうとほんとよくわかってもらえると思うんですけど、現場をね。ほんとに目とか鼻とかに入って痛いし」
山本「日本兵の服を着てる時は厚みがないじゃないですか。だから中に着込むっていう作業が難しかったですね。収容所に行ってからの囚人服みたいなのは厚みがあるものなんでごまかしたりできたんですけど、ふくらみすぎちゃう?みたいな感じになっちゃうんで、ちょっとの寒さは我慢しなきゃいけないみたいな感じでした」
Q最後に2人からメッセージをお願いします。
オダギリ「あの、すごくこう今からしゃべるぞっていう感じになってきたんで(爆)ホントに申し訳ないですね(笑)でもみなさん一度はご覧になってる方が多いんですかね。余計な話をしちゃったかなと。もし見てない方が変な先入観を持つようなことはいいたくないな思ってたんですけどね。その結果あまりうまくしゃべれなかった。(笑)とにかく本当に大変な思いを役者もスタッフもこれに加わったかたみんな大変な思いでこの作品に一生懸命魂を注ぎ込みました。あの、、、まぁ軽く見てもらえばいいかなと(爆)」
Q相反するようなお話でしたね。最後に見たあとにみなさんの心に何が残るかそういったところを楽しみにしていただけると。
オダギリ「そういう事を言いたかった(爆)」
山本「この映画この戦争という狂った状況が連続していくわけですもんね。こんな地獄が続くってないと思うんですね。この映画を観終わった後に、自分がいま戦争という状況の中でなく生きれてるというかこの状況に感謝せなあかんと思うんです。言いたいことが言えてっていう世の中で、自分が暮らせてるっていうことに幸せだなって。そのために今悲惨な状況になっていかない様に今生きてる人たちが、方向性を変えていくっていうのは必要だと思うんです。この映画を見た後に、生きてることに感謝出来るんじゃないかなと。まぁ、見てない僕が言うのもなんですけど(爆)」