第28回東京国際映画祭<期日:10月22日(木)~31日(土)>のJapan Now部門上映作品である『ピンクとグレー』。この度、本作上映後に行定監督登壇によるトークショー、本編をご覧になった観客とのQ&Aセッションを実施いたしました。
また、観客とのQ&Aセッションに移ると、質問に対し1つ1つ丁寧に答える行定監督。
さらに「中島さんが映画の中でとても綺麗だった!」と女性のお客さんから感想を言われると、中島さんの撮影秘話を明かし、会場は大いに盛り上がりました。
Q&Aセッションはあっという間に終了時間となり、お客さんはまだまだ質問し足らない様子でしたが、作品への興味関心度の高さが伺えました。
<JAPAN NOW部門とは>
近年の日本映画界の多様性を象徴する作品及び監督を選び特集上映するもの。選出された作品を観ると、今の日本映画の最新の潮流が分かると共に、現在の日本自身が見えてくるというコンセプトを持つ。
MC:はじめに行定監督から一言お願いいたします。
監督:どうもこんにちは。(会場を見渡しながら)満席ですね、嬉しいです。
MC:映画を拝見しましたが、不思議な感じがしました。まず、この作品を撮ろうと思ったきっかけは何だったんですか?
監督:原作者はNEWSの加藤シゲアキくんで、彼はいくつか小説を書いているんですね。僕は彼の作品を読んでいたんですが、加藤くんのデビュー作である「ピンクとグレー」の映画化のお話をいただいだんです。
この小説を読んだ時、エロスを強く感じたんですよね。男と男、そして姉と弟の。今の時代にこの濃密で濃厚なエロスをどうやって表現したらいいのか、浄化したらいいのか考えました。今まで僕は生や死というものを撮ってきました。加藤くんが書いた本小説も生と死が中心で、死んだ人ではなく、残された人の心情、そしてどう向き合っていくかが描かれていたので、自分の映画に引き付けやすかったですね。自分のオリジナルだとそういったテーマを描く時、不可解で曖昧になってしまうんです。でも他人が書いたものに対して、定義付けがしたくなるんですよね。映画の中で描かれるのは、生きていることの残酷さ、死ぬ時のピュアさ、そして死者を忘れたくないという気持ちもあるのに、忘れたいという気持ち。結局、死者に足をすくわれてしまっているんです。
ごっち(中島)の姉は、ダンス発表会の演技中に亡くなるんですが、彼女の潔さやけじめのつけ方は不条理でふがいなくも感じますが、ごっちは彼女に憧れをもって、圧倒的な想い秘めているんですね。だから僕は、追随する人物を描いてみたかったです。
MC:原作がある作品ですが、シナリオを書く時はどうでしたか?
監督:明確にしないようにしましたね。
今回、原作を忠実に描いたというよりアレンジした部分もあるんです。原作と同じにしなかった理由は、違う着地点が見えたから。『ひまわり』という作品を撮った時も死んだ人の気持ちを考えたんですが、結局答えが出なかったんですよね。僕は死者を美化する気はないんです、だから死者には届かない想いを理解するしかないのかなと思いました。自分のオリジナルだとできないんですけどね。(笑)だから、『ピンクとグレー』はしっかり向き合える良い機会になりました。
MC:本作は『ピンクとグレー』というタイトルですが、どんな意味があるんでしょうか。
監督:本作は、映画タイトルに色がついていますよね。色が重要なポイントでもあって、色で表現することで
鮮やかな世界と色褪せた世界があると解釈していいのかなと思ったんです。
MC:映画の前半と後半はガラリとテイストが変わっていますよね。前半は、久しぶりに行定監督が撮る“青春映画”といった感じでしたが、難しかったことはありますか?
監督:前半はダメ監督が撮る“青春映画”テイストにしました。(笑)自己批判も込めて、わざとらしい感じにもしました。ごっち(中島)とりばちゃん(菅田)の幼馴染のサリー(夏帆)が2人のもとを去っていくシーンは、大林宣彦監督の『転校生』をまるパクリしています。(笑)下手な『転校生』を撮っている感じですね。
<Q&Aセッション>
Q:本作を撮る際、キャラクターのアイデンティティについて何か考えましたでしょうか。また監督ご自身のアイデンティティは?
監督:僕は常に自分が何者なのかわからないですね。アイデンティティは他人が決めるものだと思っています。人に言われて気付くというか・・・
映画を撮る時、原作が作品で原作者に登場人物について聞いてもきっと答えてくれないと思います。
だから自分でキャラクターについて考えて、見つけ出したものを映画に出ていると思うんですね。『ピンクとグレー』の登場人物は、自分のアイデンティティがわからないところからスタートして、突き詰めていってこれから始まる様子を描いています。
Q:映画に登場する中島くんがとても綺麗でした!
監督:特に前半、中島くんはすごいと感じるシーンがありました。映画の中で「Hey Girl」という曲のPV撮影シーンがあったのですが、15分くらいでものの見事にやりきったんですね。恥ずかしがらずにキメ顔でアピールできてしまうというか、プロフェッショナルだと思いましたね。中島くんはもちろん素晴らしかったですが、菅田くんも本当に素晴らしかったんです。彼は今、日本の映画界が一番欲しているような存在。2人ともお互いをリスペクトしていることが伝わってきたし、撮影中は本当にいつもベタベタしていましたよ。(笑)結果、映画の中でもその関係が上手く出ていたと思います。
Q:原作者の加藤さんから映画の感想は聞いていますか?また原作を大幅にアレンジしているかと思うのですが、その点について加藤さんから何か言われましたか?
監督:実はまだ感想は聞いていないんです。
加藤くんは、映画が大好きでよく観る人なんですね。今回、実験的なことも多いのですが、きっとそんな彼なら理解してくれると思います。原作を大幅にアレンジしていることを知った加藤くんは、「監督の本気度が伺えました!」と言ってくれました。(笑)原作を映画化の時、人によっては自身の作品愛もあると思いますし「一語一句変えないでほしい」と言う方もいると思います。その分ハードルが上がりますが、逆に燃えますけどね。(笑)
でも加藤くんの場合は、何も言わない人。僕は両方ありだと思っています。それに、原作をちゃんと映画化できる!と思わないと預かれないですよね。映画はオリジナルで作るべきとも思いますが、原作を映画化することはとても大変ですが、面白いと感じています!
「ピンクとグレー」
ジャニーズの人気グループ「NEWS」の加藤シゲアキが2012年に発表した処女小説を、「世界の中心で、愛をさけぶ」「北の零年」の行定勲監督が映画化。脚本を担当する若手劇作家・蓬莱竜太と行定監督が原作を大胆にアレンジして再構成し、小説では明かされなかったエピソードも描く。人気俳優の白木蓮吾が急逝した。自殺か他殺かも判明しない中、彼の少年時代からの親友で死の瞬間にも立ち会った売れない俳優・河田大貴に世間の注目が集まるが……。テレビドラマ「半沢直樹」や「水球ヤンキース」などで俳優としても注目を浴びる「Hey! Say! JUMP」の中島裕翔が映画初出演にして主演を務め、「そこのみにて光輝く」の菅田将暉、「海街diary」の夏帆、「誰も知らない」の柳楽優弥といった若手実力派が脇を固める。
監督:行定勲 脚本:蓬莱竜太・行定勲 原作:加藤シゲアキ「ピンクとグレー」(角川文庫) 音楽:半野喜弘<br />
製作:「ピンクとグレー」製作委員会
配給:アスミック・エース<br />
(C)2016「ピンクとグレー」製作委員会
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